都電沿線のバラを育てよう、
咲かせよう、つながり合おう
荒川バラの会
荒川区の呼びかけで
発足したボランティア団体
都電荒川線が区の中央部を東西に走る荒川区。同区では1985年に、都電荒川線を“みどりの軸”と位置づけ、沿線でバラを育成する緑化事業をスタートしました。バラが選ばれた理由は、美しく、華やかで、香りが良く、花期が長いため。そんな魅力あふれる沿線のバラにさらに親しみを持ってもらおうと、同区ではバラのお世話をする区民ボランティアを募集。こうして2003年に誕生したのが「荒川バラの会」です。
「現在は、約90名の会員がエリアごとに5つの班に分かれて、月2回、隔週で活動しています」と、会の活動について紹介してくれるのは、同会会長の岸 ゆりさん。お話をお聞きしたのは7月中旬。「今はちょうど二番花が咲いているので、咲き終わったら夏季剪定を行って肥料をやります。夏は草むしり、これが大変。秋には秋バラがきれいに咲き、2月には冬季剪定を行います。夏よりもっと切って肥料をあげると、4月に芽吹いて5月にきれいに咲くんです」。1年で1番きれいな5月のバラを多くの人に楽しんでもらおうと開催されることになったのが「あらかわバラの市」です。
荒川区を代表するイベント
「あらかわバラの市」
第一回「あらかわバラの市」が開催されたのは2009年。以来毎年5月中旬に、都電の「町屋駅前」停留場周辺で開催されてきました。鉢植えのバラの販売、育て方講習会、演奏会、地元商店街の出店も並び、区外や都外からも来場者が増え、毎年賑わいをみせています。「バラの会の皆さんには、毎年総出でお手伝いいただいています」と、会長の岸さんに笑顔で頭を下げるのは荒川区防災都市づくり部道路公園課緑化推進係の鈴木快さん。それに応えるように岸さんも「1日で5000鉢売ることを目標に、この日は売り子に徹しています」と笑います。バラの会のメンバーにとっても、5つの班が年に1回集結する楽しみなお祭り。そしてこのイベントを通して、「あらかわバラの会」のことを知り、入会を希望される人もいるそうです。「年々、荒川区の中にバラの花が増えて、仲間も増えていくことが本当に楽しみです」と、岸会長。
都電沿線からバラを愛する心
みどりを育む輪を広げたい
しかし2020年の5月は新型コロナウイルスの影響から「あらかわバラの市」は開催することができませんでした。「毎年開催し続けてきたイベントが12回目で中止になってしまったことも残念でしたし、ちょうどきれいに咲いている時期なのに誰にも見ていただけないことが悲しい5月でしたね」と話すのは、緑化推進係長の茂手木瑞紀さん。その言葉に、行政とボランティア団体が、心をひとつにし、地域のためにバラに愛情を注いでいることを感じます。「あらかわバラの会」の皆さんが毎年楽しみにているもうひとつのイベントが会員有志に参加を募り開催される「バラ園見学講習会」。都内や近郊のバラの名所を訪れてきましたが、こちらも2020年は開催を見送ることになりました。
大きなイベントは開催できないけれど、バラのお手入れのあとにグループでお茶を飲んだり、道行く人に「きれいですね」と、声をかけてもらえることが張り合いだという岸さん。「保育園の子どもたちのお散歩コースになっているエリアがあって、会うたびに小さいお子さんたちが元気にあいさつしてくれるのが可愛いくて」と目を細めます。
こうした活動が高く評価されさまざまな賞も受賞している「あらかわバラの会」。2016年にはグリーンボランティアの最高賞ともいわれる「平成28年緑化推進運動功労者内閣総理大臣賞表彰」を受賞しました。「こうして活動を続けてこられたのは、厳しく出席をとったりせず、“行けるときに楽しく”というスタンスのおかげだと思います」と語る岸さん自身も、子育てや介護などで活動できない時期があったそうです。「お勤めしている方には土曜日活動する班がありますし、お花の好きな方、興味のある方はぜひお気軽に声を掛けてください。バラの花の輪がどんどん広がって、今後は、都電沿線の他区のサポーターズさんたちとも交流を持てたらと願っています」。