鬼子母神堂と、都電と、古本市+フリマ
“みちくさ”が楽しい商店街

鬼子母神堂と、都電と、古本市+フリマ “みちくさ”が楽しい商店街
商店街系

雑司が谷 鬼子母神通り商店睦会

2008年にスタートした
“みちくさ市”を隔月開催

2008年にスタートした
“みちくさ市”を隔月開催

安産と子育祈願で知られる鬼子母神堂から、都電荒川線「鬼子母神前」停留場を超え、目白通りまで続く商店街、それが「雑司が谷鬼子母神通り商店睦会」です。大正時代にまで遡る歴史ある商店街で、現在の加盟店は約50店。この商店街では、2008年から一般参加型の古本市とフリーマーケットが合体したイベント「みちくさ市」を隔月開催しています。
「閉店してしまった店のシャッターの前に一般参加者に出店してもらって、商店街の店とつないだら、点と点がつながって線になりますよね。通り全体を盛り上げようと始めました」と、話すのは睦会会長の建持直樹さん。祖父の代から続くキク薬局の三代目です。建持会長のそんな想いからスタートした「みちくさ市」は回を重ねるごとに出店者も増え、トークショーや野菜市も併催するなど、近隣住民だけでなく、遠方からの来場者で賑わう人気イベントに成長しました。

本を生業にする人たち
“わめぞ”との出会い

本を生業にする人たち
“わめぞ”との出会い

商店街を会場に、このようにユニークなスタイルのイベントが実現した背景には、本に関する仕事をしている人たちのグループ「わめぞ」との出会いがありました。2008年6月、副都心線「雑司が谷駅」の誕生を記念し、近隣の4つの商店街が開催した合同イベントに、わめぞのメンバーが古本市を出店していたのです。「“わめぞ”っていうのは彼らが活動している街、早稲田・目白・雑司が谷の頭文字なんです。彼らはいろんな場所で移動古本市を運営するノウハウを持っていたので、一緒に何かできないかと、僕から声をかけました」。
それからわずか5カ月後、同年11月に「みちくさ市」はプレ開催されました。驚くべきスピード感!「商店街という器を我々が用意して、中身の運営は彼らにすべて任せた。それがよかったんだと思います。お互いの得意なことを尊重して、苦手なことを補って、WINWINの関係が築けていると思う」と建持さん。わめぞプロデュースのトークショーには、びっくりするような人が登壇することもあり、遠方からコアなファンが足を運ぶこともあるそうです。

点から線、線から面へ
街歩きを楽しんでほしい

点から線、線から面へ
街歩きを楽しんでほしい

毎年4~5回、休みなく開催してきた「みちくさ市」も、2020年は新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされました。「地域に迷惑をかけてはいけないので、安心して再開できる日まで、今はとにかくじっと耐える期間」と、建持さん。そしてその期間にも建持さんの構想は膨らみ続けています。
2020年3月末、商店街近くの雑司が谷公園が、隣接する高田小学校跡地と合わせ拡張整備され美しく生まれ変わりました。いずれはこの公園も「みちくさ市」の会場にできれば、想像するだけで胸が踊ります。
『道草』の著者、夏目漱石も眠る雑司が谷霊園、都電荒川線、鬼子母神堂…。「みちくさ市」を通して街歩きを楽しみ、文化の街豊島区の魅力を感じてもらえたら、と建持さんは言います。「鬼子母神通りから人の流れが滲み出て、点から線、線から面へ、広がっていくといいですよね。新しくなった雑司が谷公園の中を通ると、お隣の弦巻通り商店街ともつながるんですよ」。都電「鬼子母神前」停留場からの街歩きが、ますます面白くなりそうです。
「ひとつ角を曲がると、全く違う風景が見られる。それが“都会の田舎”の魅力です」。

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