想いを共有する仲間たちと
尾久を新しく面白い街へ

想いを共有する仲間たちと 尾久を新しく面白い街へ
おもてなし

オクノテ

銭湯店主3代目が、
地域のために動き始める

銭湯店主3代目が、
地域のために動き始める

都電荒川線「小台駅」から徒歩約7分、小台本銀座商店街を歩いていくと、4年前にリニューアルしたという銭湯「梅の湯」が見えてきます。1951年創業、現在の若き店主は、3代目の栗田尚史さん。栗田さんは、銭湯を切り盛りしながら、尾久エリアの活性化を目指して「生まれて、育って、老いてよし」をスローガンとする「訪れたい街づくりの会“オクノテ”」の代表も務めています。
 「オクノテ」発足は、2009年。その頃、西尾久界隈の商店街は、昔のような賑わいは失われていたといいます。栗田さんにとっては、愛着のある西尾久の街。「元に戻すことはできなくても、自分たちの手で新しい魅力ある街を作りたい。地域の人とつながりたい」。さらに栗田さんは「町会や商店街という単位ではなく、もっと自由に、だけど一人じゃない、そんな活動ができないか」と考え、同じ想いを共有していた近所の店主など数人と組んで「オクノテ」という会を作って立ち上がり、地域に根ざした活動を始めました。

子どもたちに地域の楽しさを
知ってもらいたい

子どもたちに地域の楽しさを
知ってもらいたい

 まずは「自分たちの手の届く範囲でできることを」と考え、始まったイベントが「あらかわハロウィン」(2011〜2015年開催)。仮装した子どもたちが地域をパレードし、最後に、近隣のあらかわ遊園をはじめとする各スポットでお菓子が配られるというイベントです。回を重ねるうちに町会や地域の団体とも連携するようになり、1日で約1000人もの親子が参加するような大きなイベントへと成長していきました。
 他にも、商店街に人を集めるきっかけになればと、空き店舗を活用し、駄菓子屋とベーゴマやおはじきなどの昔遊びができるスペースを設けた「オクノテ駄菓子屋」も開催。「子どもの頃、商店街にあったお店で遊んだ記憶が原点ですね。今の子どもたちにもその楽しさを味わってもらいたくて」と栗田さん。オクノテの活動は次第に知られるようになり、「お店は持っていないけど、個人的に手伝いたい」という人も現れるようになりました。個人の得意なことを活かしてフレキシブルに活動に参加するような、ゆるやかなつながりを持ったメンバーが少しずつ増えていったといいます。

変わりゆく尾久の街
変わらない街への愛着

変わりゆく尾久の街
変わらない街への愛着

 2019年には、街に大きな変化がありました。ある不動産会社の“楽しく、人とのつながりがある開かれた街づくり”を目指す新プロジェクトの場として、小台本銀座商店街が選ばれたのです。「不動産会社が商店街の空き店舗を確保し、物件を募集したら、元青果店にコミュニティスペースができ、他にも新しいお店がいくつも入りました」。商店街を歩いてみると、レトロな街並みや建物にうまく溶け込んだ、器のお店や古書バー、串カツ屋が目に止まります。どこも思わず入ってみたくなる、おしゃれで魅力的な店ばかり。なぜ、この商店街が選ばれたのでしょうか?「西尾久に決めた理由は、オクノテの活動があったからだそうで(笑)。街を面白くしたいと思っている人の存在が大きかった、と言われました」。
 「思いがけず、街づくりが一歩大きく前進した」と栗田さん。一方で、これからの課題も見えてきたといいます。「昔からの住民の方にいかに新しいものを受け入れていただくか、そこも考えていきたいですね」。最後に、栗田さんに尾久の好きなところは?と尋ねると、笑顔でこう答えてくれました。「尾久は余白のある街。懐かしさがあり、新しさを受け入れていく力もあると思う。みんなこの街が大好きですよ、ただ言葉にして言わないだけです(笑)」。

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