親子二代の手作り模型が伝える
都電の歴史と魅力
鉄道模型 のぞみ会
鉄道を愛する父から息子へ
大工の技で作った模型
2022年4月にリニューアルオープンしたあらかわ遊園のふれあいハウス1階にある「下町都電ミニ資料館」。その中の鉄道模型運転場の管理・運営ボランティアを行っている団体が「のぞみ会」です。二代目会長の伊藤朋行さんに、会の歴史をお聞きすると「設立は何年ですかね、かなり昔です。あ、新幹線の“のぞみ”が生まれた年ですね」。のぞみ号にちなんで命名された「のぞみ会」、設立は1992年ということですね。
朋行さんの父で初代会長の伊藤信男さんは子どもの頃から電車が大好きで、市電(現在の都電)で通勤していた父親を迎えに、いつも停留場に電車を見に行っていたそうです。大工の職につき、結婚して子どもが生まれると、"子どもに鉄道を見せてあげたい"と、鉄道魂が再燃。「4、5歳くらいの頃かな、親父が仕事現場の片隅にレールを敷いてくれて、電車を走らせて遊んでましたね」と朋行さん。
自宅から、貸しホール、
常設展示場を経てあらかわ遊園へ
信男さんは大工の腕を活かし、ベニヤ板で鉄道模型のレイアウトを作るようになりました。鉄道模型における「レイアウト」とは、模型列車を走行させるための線路と情景を備えた運転施設を指します。最初は1畳分から、いつしか20畳もの規模に広がり、もっと多くの人に楽しんでほしい、と「のぞみ会」を設立。ホールを借りての展示会を経て、自宅近くの2階建て物件を借り自ら改修。延べ床面積80坪の常設展示場には、全国の鉄道ファンがやってくるようになりました。「その建物が取り壊しになるタイミングで、“あらかわ遊園の中に都電の資料館をつくるので、そこに模型を”というお話を父はいただいたんです」と、朋行さん。「のぞみ会」は資料館の中に、子どもたちが操作できるNゲージ運転場を設置し、週末ごとにボランティアとして運営活動を続けてきました。そして、あらかわ遊園がリニューアル工事のために閉園していた3年余りも、来るべき再開の日に向け、新しい模型をコツコツと準備し続けてきました。
本物そっくりの
都電の模型が沿線各所に
初代会長は、実際に走るNゲージ模型の他に、本物の電車そっくりの大型模型も手掛けてきました。「子どもたちが抱えて写真を撮れるように作り始めたようです」と語る朋行さんも、父親譲りの手仕事で新作を制作中。都電の線路を臨む自宅の外壁には、ショーウインドウが設けられ、親子二代の鉄道模型が展示されています。「車体はボール紙でできているから軽いんですよ」。そう言われるまで紙だとは気づかないほどの精巧な作り。車窓から見える車内のインテリアまで緻密に再現されています。「100円均一のショップに行くと、“お、これはつり革に使えそうだな”とかね、材料探しも楽しいんですよ」という朋行さんの言葉に驚いて、よくよく見直せば、ワイパーはなんとヘアピン!すべてが手作りだということがわかります。「親父が設計図を残してくれているので、それを見ながら休みの日や、仕事が早く終わった日にちょっとずつね」。
「のぞみ会」の都電模型は、荒川区を超えて豊島区の雑司が谷案内処など都電沿線各区の施設や学校お店などに展示され、都電荒川線の魅力を多くの人に伝えています。初代会長が「たくさんの子どもたちを楽しませたい」という思いで作った模型電車が、あらかわ遊園の「下町都電ミニ資料館」で、再び走り始めています。