雑司が谷が誇る歴史遺産を
次世代に伝えていきたい
としま案内人 雑司ヶ谷
見所がコンパクトにまとまった
案内しやすい街
豊島区の雑司が谷地区を案内するボランティアガイドの会「としま案内人雑司ヶ谷」。2011年、豊島区主催の「雑司が谷ボランティア養成講座」を修了した第1期生が活動をスタートさせました。現在、メンバーは23名。「地元に住んでいる方が多く、お仕事をリタイアされた方、専業主婦の方も活躍しています」と話すのは、代表の小池陸子さん。
雑司が谷は、副都心近隣とは思えない風情ある街並みの中に、雑司ヶ谷鬼子母神堂、雑司が谷旧宣教師館、雑司ヶ谷霊園など見どころがいっぱい。「ガイドスポットはコンパクトにまとまっているので、私たちもご案内しやすいんです」。街の中心部には、都電荒川線「鬼子母神前」停留場、副都心線「雑司が谷」駅があり、池袋からも徒歩圏内。駅近くには、小池さんたちの活動拠点でもある地域の情報ステーション「雑司が谷案内処」もあり、誰でも気軽に街歩きを楽しめる環境が整っています。
昔の写真や図会を見ながら
街歩きが楽しめる
案内する時は、ガイドがトレードマークの青い半纏を身にまとい、1グループに2名のガイドが付き、10〜15名の参加者とともに約2.5時間のコースを巡ります。ガイドコースのテーマは、「まるごと雑司が谷」「雑司ヶ谷霊園と雑司が谷旧宣教師館」「雑司が谷七福神めぐり」、他にも「消えた川“弦巻川”」などミステリアスなコースも。「シニアの方だけでなく、学生さんや海外の方のご参加も多いです。一番人気は、鬼子母神堂。特別にお堂に入れていただける、このガイドならではの体験ができた時には、皆さん感動してくださいました」。
さらに、このガイドの特徴は、昔の写真や地図、名所図会を資料として見せながら案内すること。「江戸時代の雑司が谷は、江戸名所図会や歌川広重の浮世絵などにも描かれていました。江戸名所図会にある道が今も残っていることをご説明すると、とても驚かれますね」。雑司ヶ谷霊園は、夏目漱石や永井荷風、竹久夢二など多くの文化人が眠る霊園。そこでは、偉人の写真や作品を見せながら案内するそうです。参加者の想像力をかきたてるような工夫が随所になされているのも、大きな魅力といえるでしょう。
区内の子どもたちも案内、
反応や感想に手応えも
区内小学校の社会科見学のガイドも受け入れている「としま案内人雑司ヶ谷」。とりわけ、小池さんが嬉しそうに話してくれたのが、見学に訪れた子どもたちの話でした。「お寺のお堂に入った子どもの中には“畳に座ったのは初めて!”と言った子もいましたね(笑)。“鬼子母神堂”の“鬼”の字は、頭に点が付かないのよと教えると、しっかり学んでくれて、感想文にも正しい字で書いてくれるんです」。そう言って、子どもたちから届いたたくさんの感想文を見せてくれる小池さん。「雑司が谷の歴史や文化を次の世代につなげたい」。それが、ガイドの皆さんの活動の原動力、大きな願いでもあるそうです。
2014年、雑司が谷地区は、これまでの地域団体の文化活動が評価され、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録。観光客も年々増えていきましたが、今回のコロナ禍でガイドは一旦中止となりました。「もともと、年3回、雑司が谷にちなんだイベントも企画、開催していました。今年も大々的にやろうと思っていたのですが…収束したら、必ずやりたいですね」と小池さん。歴史と文化が薫る街、雑司が谷。都会の真ん中でひっそりと、再び多くの人が訪れる時を待っています。