とでんさんぽ
街歩きエッセイスト チヒロと行く
名物女将に会いに行く
20歳の頃からぼんごで働くスタッフのかくさん(写真左)と、2代目女将の右近由美子さん(写真右)。
※撮影時のみマスクを外しています。
大塚のパワースポットと言えば、「おにぎり ぼんご」。名物女将・右近由美子さんをはじめ、スタッフの皆さんが開店準備に勤しむ姿はまるで「ぼんご劇場」の舞台裏をのぞいているようだ。「牛乳と乳飲料ってどう違うの?」と聞く従業員さんに、「牛に聞いてくださーい」と明るく返す由美子さん。しきりに手を動かしつつ、「座って静かに進めるような仕事じゃないから、楽しくやらないとね」と笑う。
ぼんごのおにぎりは、ひと口食べたら恋に落ちる。新潟産の大粒の米をたっぷりと型に入れ、「そんなに入れていいの?」と驚くほどいっぱいの具を乗せ、まるで布団をかぶせるような穏やかな手つきで、米を乗せる。ぎゅっと握らず、ふんわり包み込むように海苔を巻く。体感的には10秒で、あっという間におにぎりの完成だ。山のてっぺんには、いまにもこぼれ落ちそうな具。人目を気にせず、ばくっと大きな口を開けてかぶりつくと、からだ全体に沁み渡る味わい。
「料理は自分のために作らない、誰かに食べてもらうから作る」という由美子さんの言葉にも、ぼんごの美味しさの秘密が隠されているような。
ぼんごが愛される理由は、おにぎりが美味しいからだけではない。裏表のない接客、きびきびと働く店員さんの姿。店の隅々にまで心配りが行き届いている。その姿に感激したお客さんから手紙を貰うこともあるという。「70歳で引退しようと思っていたんです」と由美子さん。でも、最近撤回した。ぼんごのおにぎりを通じて、今の時代に枯渇している人の温もりをまだまだ届けようと日々奮闘する姿に背すじが伸びる。
都電は今日も大塚駅前をぐるりと囲み、向原から鬼子母神へ向かう。大塚の街が池袋のとなりとは思えないほど、どこか牧歌的に感じられるのは、きっと都電が走っているから。立ち寄った喫茶店や和菓子屋では、店の人が朗らかに声をかけてくれ、心がなごむ。
大塚には、まだそんな店がいくつも残っている。
Pick Up!
サンモール大塚商店街にある「桃太楼の菓子」で見つけたあんドーナツが素朴で美味しい!
大きさが微妙に異なる丸い形から、手づくりの温もりが伝わってくるよう。
チヒロ
浅草育ちの街歩きエッセイスト。 東京下町さんぽの魅力を届ける WEB マガジン「かもめと街」(www. kamometomachi.com)を運営。 Instagram:@kamometomachi
おにぎり ぼんご
昭和35年創業の老舗おにぎり専門店。56種類もの具材のラインナップは、お客さんのリクエストから次第に増えたものだとか。チヒロさんのイチオシは「牛すじ卵黄」と「山ごぼう」。テイクアウトOK。
- 住所
- 豊島区北大塚2-26-3 金田ビル1F
- 電話番号
- 03-3910-5617
- 営業時間
- 11:30~23:00
- 休み
- 日曜
- アクセス
- 大塚駅前停留場より徒歩約3分
※価格はすべて税込み表記です。年末年始の休業については各施設にご確認ください。
※このページの情報は2022年01月01日時点の情報になります。営業時間等、最新情報は各店舗にご確認ください。