都電荒川線100周年記念

都電サミット

都電サミット

町と町、人と人をむすび、暮らしをひらいた都電荒川線 2011年7月24日(日)に開催されました。[場所]南大塚ホール 東京都豊島区南大塚2-36-1

第1部パネルディスカッション

西川 太一郎氏(荒川区長) 花川 與惣太氏(北区長) 高野 之夫氏(豊島区長) 
中山 弘子氏(新宿区長) 野澤 美博氏(東京都交通局長)

西川 太一郎氏
西川 太一郎氏
花川 與惣太氏
花川 與惣太氏
高野 之夫氏
高野 之夫氏
中山 弘子氏
中山 弘子氏
野澤 美博氏
野澤 美博氏
青山 佾氏
青山 佾氏
  • コーディネーター

    青山 佾氏(明治大学大学院教授)

第2部パネルディスカッション トークショー

なぎら 健壱氏(タレント)

都電荒川線沿線を歩いて撮影した写真集『町のうしろ姿』(岳陽舎)を出版しているなぎら健壱さん。その体験談などをもとに、トークショーでは都電の魅力をたっぷりと語っていただきます。 どうぞお楽しみに!

都電サミットの模様

誕生100年、楽しくゆったりと
野澤美博東京都交通局長あいさつ


あいさつする野澤美博東京都交通局長
 都電が産声を上げてから100年の長い歴史を振り返り、唯一残った荒川線の魅力と未来について沿線4区の区長さんと語り合い、これを新たな出発点として、さらに荒川線を盛り上げていきたいと考えています。
 第2部のトークショーでは、下町育ちで都電ファンのなぎら健壱さんから都電の魅力をたっぷり語っていただきます。懐かしい思い出に浸りながら、これからの荒川線に思いをはせて、楽しくゆったりとした時間をお過ごしください。

資料を手にパネリストの発言に聞き入る「都電サミット」の参加者=7月24日、いずれも東京都豊島区の南大塚ホールで

荒川線沿線に咲き誇るバラと都電=今年5月、東京都荒川区の三ノ輪橋停留場で

浅草・雷門前を走る都電=1967年

「21世紀都市」へ…エコと人情と文化を乗せて 今、都電の時代

 都電荒川線100周年を記念した「都電サミット」が7月24日、東京都豊島区南大塚ホールで開かれた。沿線4区の区長と、野澤美博・東京都交通局長の5人がパネリストとなり、明治大学大学院教授の青山佾さんの司会で興味深い話を披露した。続いて、なぎら健壱さんのトークショーがあった。司会者の白沢みきさんを相手に、なぎらさんが自身で撮った写真を映し出しながら沿線の街の移り変わりを語り、約300人の満席の聴衆から盛んな拍手を浴びた。このサミットは東京新聞と荒川区・北区・豊島区・新宿区・東京都交通局でつくる実行委員会が共催した。

青山氏 5年前、沿線4区の区長さんと私の5人で「都電サミット」を開催した。きょうも同じメンバーで、当時の提言が、その後どうなったか、沿線の魅力、都電の将来を語り合いたい。
 まず、野澤交通局長から、都電の歴史と現状を。

野澤交通局長 都電は、今から100年前の明治44(1911)年、東京都交通局の前身の東京市電気局が東京鉄道株式会社を買収し、路面電車事業を開始した。同年、王子電気軌道株式会社が飛鳥山上から大塚間に開業した路面電車が、今の荒川線の前身だ。
 関東大震災、東京大空襲で交通局の事業は壊滅的な被害を受け、戦災からの復興も財政難、資材難から予定通りには進まなかった。
 昭和30年代、東京の人口が膨れ上がり、自動車交通量も増大して、昭和35年に道路交通法が施行され、都電の輸送効率は大幅に悪化した。その後も経営は悪化の一途をたどり、昭和42年、交通局は財政再建団体の指定を受けて、路面電車は昭和47年度までに現在の荒川線を除くすべての路線を廃止した。
 荒川線は、昭和53年に全車ワンマン化、その後、運行管理システムを導入、停留場施設のバリアフリー化など事業改善を図り、平成19年にレトロ車両を導入した。現在、荒川線は三ノ輪橋から早稲田の12.2キロを約53分で走る。停留場は30カ所。1日約5万人の利用客がある。

青山氏 都電は、もとは馬車軌道だった。それが電気で動く車両になり、民営から東京市の公営となって、ことしで100年になる。
 5年前参加の区長が全く同じ顔ぶれでそろったのは、都電沿線の区政が安定しているということだろうか。(笑い)
 前回サミットの提言の1つ目は花電車(花100形)の復活だったが。

花川北区長 ことし、都電荒川線100周年記念事業の一環で、6月から8月の数日、花電車を運行させることになっていた。しかし、東日本大震災の影響で延期となり、その約束が果たせず、大変残念だ。電力が安定する秋には、ぜひ実現していただきたい。区民も花電車の33年ぶりの運行を大変期待している。地域もにぎわうことだろう。

青山氏 2つ目の提言は、荒川線沿線を観光資源としたガイドマップをつくるということだった。

西川荒川区長 ハンディーで便利なものができたと思う。

中山新宿区長 都電は、乗って楽しく、ゆっくりと地域を感じられる。「都電荒川線散策MAP」は、各区の土地の記憶を掘り起こした、いいものになった。

青山氏 3つ目の提言は、4区の連携を深めること。

高野豊島区長 4区で連携を強め、手を結べば、東京の最大の魅力あるまちづくりができるという5年前の思いは、かなっていると思う。

野澤局長 都電は、4区の絶大なる支援がなければうまく運営できない。支援をいただくことで、都電も地域も元気になる。

青山氏 都電沿線の魅力の紹介を。

西川区長 荒川区の話に入る前に、交通局さんには、1台2億円もの新車両を投入していただき、都民の足、また観光のツールとなっていること、さらに8800形車両導入時に森ケ崎の浄水場での下水処理過程で生まれるバイオマスを発電に回すなどのご努力もいただいていることを、4区を代表して感謝申し上げたい。
 荒川区には都電の停留場が13あるが、イチ押しはあらかわ遊園で、沿線の皆さんに大いにご利用いただいている。また、新交通システム日暮里・舎人ライナーの開通で、熊野前から成田国際空港へアクセスしやすくなった。
 都電は通勤通学の手段だけでない。観光の一つの目玉でもある。東京インプログレスから見るスカイツリーは一番いいと絶賛されている。

花川区長 北区に通う高校生が、北区は都電と車が同じ道を走っているところが好きだ、都電という伝統を残してほしいと話していた。都電は北区のイメージアップに大変役立っている。
 北区の見どころは、何といっても飛鳥山公園の桜だ。飛鳥山博物館や渋沢史料館、洋紙発祥の地である王子には紙の博物館もある。数多くの文化遺産のほか、都市公園100選の一つである音無親水公園、その北側には、非常に格式の高い王子神社もある。年末には、王子稲荷の王子狐(きつね)の行列が新しい風物詩となっている。西ケ原や滝野川、梶原などの街も、ぜひ都電に乗って訪れていただきたい。

高野区長 豊島区にある都電の停留場は九つで、新庚申塚は染井霊園等を含めて桜の名所だが、駒込がソメイヨシノの発祥の地であることは案外知られていない。また、庚申塚のとげぬき地蔵には、4の日の縁日には都電で大勢の人が訪れる。
 巣鴨新田の次が、若い方を中心に今、一番元気のある街、大塚だ。向原の次の東池袋4丁目には、4年後に区役所新庁舎が完成する。
 都電雑司ケ谷から鬼子母神前、学習院下と、古きよきもの、緑がたくさん残っており、大都会の中で四季を体験できるまちづくりができたらと思っている。

中山区長 新宿区内には二つの停留場があり、早稲田は、早稲田大学の学生が毎日利用している。夏目漱石生誕、終焉(しゅうえん)の地であることから、新宿区では漱石山房復元の取り組みをしている。面影橋の見どころは、何といっても神田川の桜で、高戸橋付近は撮り鉄ファンに人気の撮影ポイントだ。

青山氏 都電は自動車の邪魔にされ、廃止の議論ばかりだったが、4人の区長さんのお話では、都電と沿線地域とで非常にいい関係ができている。

野澤局長 交通局は、地下鉄、バスも経営をしているが、地域との結びつきは荒川線が一番強い。

青山氏 最後に、都電の未来についての夢を。

西川区長 交通局には軌道内の芝生化をぜひお願いしたい。バラの市や写真展も、交通局と4区合同でやれたらと思っている。

花川区長 都電は大変環境に優しい交通機関だ。排ガスを出さず、コンパクトでバスと電車のよい面を持っている。乗り降りもしやすいし、形も洗練され、都電ファンも増加している。区民の足として、また観光資源として、都電をもっともっとPRしようではないか。

高野区長 都電はまさに環境の代名詞で、沿線は環境都市づくりのシンボルとしても活用できる。
 前回のサミットから5年間のブランクがあったが、絶えず情報を発信していくことが大事。「都電サミット」ももっと頻繁に開催したいし、区長だけでなく、地元商店街、商工会、区民の4区連携も必要だ。

中山区長 芝生化は大賛成。緑や水辺は東京には特に重要だと思う。都電は、みんなが日常乗ってくれなければ結局、経営がうまくいかず、消えることになる。都電が今後も持続できるよう、高田馬場駅や新宿駅、飯田橋駅とつなげられたらいいと思っている。

西川区長 高野区長、中山区長の提案に私も大賛成だ。
 テレビを通じて都電の露出度を高くしたり、都電のお菓子、グッズに力を入れてもいい。都電絵画展の開催を、という意見もある。4区の協力で、まだまだ値打ちのある観光スポットが開発できる。
 都電が走る、それが文化につながる。都電は、単なる交通手段ではない。私たちが育ってきた背景にあるものだ。

野澤局長 夢を語らないと、その事業は発展をしない。今後も各区の観光課や地域振興部署と連携してアピールしていきたい。
 4区連携によるバラの市、軌道内緑化は、お互いに知恵を出し合っていきたい。延伸は、正直、交通局単独では荷が重いが、先輩たちの残した路面電車を、末永く東京の財産としていきたい。

青山氏 近年、路面電車は世界的にも見直されているが、何より都電は東京の歴史を示す。これを大切にすることが東京の発展となる。それをお互いの共通の認識としたい。



観光の目玉に 荒川区長
心躍る花電車 北区長
環境の旗印に 豊島区長
緑の軌道ぜひ 新宿区長

パネルを見ながら荒川線について語る、なぎら健壱さん

下町の風情残し走る なぎらさんトークショー

白沢みきさん 都電荒川線の印象を。

なぎらさん 世の中、どんどんデジタル化され、アナログ時代の温かさがなくなっている中で、都電はやはり温かくて、何かほっとしますよ。上を見上げる電車ではなくて視線が低いのがいいし、民家の間を通っていく電車は世界に類を見ない。いろんな顔を持っていますし、庶民の町にあって、昔の下町の雰囲気を残しているんですね。

白沢さん 荒川線沿線の懐かしい写真が盛り込まれた『町のうしろ姿』という本を出されたが、そのきっかけは。

なぎらさん 2005年に雑誌の取材で鬼子母神に行って、翌年も行ってみたら、そのときにあった風情のある、しもた屋やお店がなくなっていて愕然(がくぜん)としました。もしかしたら荒川線沿線が変わってしまうという危機感のようなものがあって、これは写真に撮っておこうと。
 例えば、三ノ輪橋駅の裏にあった「君島」という飲み屋、ハイボール200円、冷やしビール、2級酒、いいですねえ。鬼子母神の踏切そばにあった「豊島屋」というお肉屋さん、庚申(こうしん)塚の「むさしや」というおそば屋さん、早稲田の小さな駄菓子屋さん、みんななくなってしまって、何年か後には、ここにあったことさえ忘れられてしまう。町の形態が忘れられていく。
 特に雑司ケ谷から鬼子母神にかけては、わずか4年前まで、私たちが子供のころに虫を追いかけたりした風景が残っていたのに、再開発で道路が通るということで、すっかり変わってしまったんですよ。池袋の「人世横丁」も、ついになくなった。こういうエリアをなくしてしまったら、そこに根づいた文化が変わってしまう。悲しいですね。

白沢さん なぎらさんは芸能界ナンバーワンの居酒屋通と言われています。

なぎらさん でも、人の息吹を持っている町は、ほかのものが入って違う町にしようと思っても、なかなかできない。荒川線は、実はそういうところを走っていて、今でも下町の風情をたくさん残している。昔に戻るのは無理だとしても、ものすごいサイクルで動いている東京で、どうにかしてこの最後のチンチン電車を残してほしいと思います。私は残っていくと思っていますけどね。

荒川線、ファンとともに 超低床車両、環境にもやさしく

 東京都交通局の前身である東京市電気局が路面電車事業を開始してから100年。最大で40系統が区部を縦横に走り回った都電も、いまや荒川線(三ノ輪橋-早稲田)12.2キロメートルを残すのみとなったが、住宅街や道路をゴトゴトと走る姿はどこか愛嬌(あいきょう)があり、ファンは絶えない。急激な自動車社会の到来で一時は厄介者扱いされた路面電車だが、ここにきて、環境にやさしい交通機関として見直す動きも出ている。
 東京に初めて路面電車が走ったのは1903(明治36)年。品川-新橋間を第一号に、民間の3社が次々と新規路線を開業していった。経営効率化のため、3社は06年に合併し、東京鉄道を設立。これを買収し、東京市電が走りだした。
 太平洋戦争の開戦から間もない42(昭和17)年2月1日、陸上交通事業調整法により王子電気軌道など路面交通事業8社が統合され、市電に1本化。この王子電気軌道が現在の荒川線に当たる。
 43年の都制施行で東京都交通局に改称。1日の利用客は193万人と最盛期を迎える。しかし、戦災で都電も壊滅的な打撃を受け、終戦時の乗客数は38万5千人にまで落ち込んだ。
 戦後の急激な自動車社会の進展で、東京都は67年、路面電車の全廃を決定。しかし、荒川線だけは沿線住民による存続運動が功を奏し、73年に一転して存続が決まり、今日に至っている。
 かつて全国65都市で走っていた路面電車も現在では17都市の計200キロ余で走るだけだ。しかし、超低床車両によるバリアフリー化や、騒音を低減する弾性車輪を採用した「次世代型路面電車(LTR)」の登場で路面電車を見直す機運が広がっている。
 2006年には、富山市で日本初の本格的LTRが開業。東京・池袋や銀座でもLTRを導入しようという構想が動きだしている。世界的にもフランスやスペインで次々と導入され、住民の足として愛されている。
  (社会部都庁キャップ・浜口武司)

主催/都電荒川線100周年記念事業実行委員会(荒川区・北区・豊島区・新宿区・東京都交通局)
共催/東京新聞 協賛/財団法人 東京都交通局協力会

新宿区 豊島区 北区 荒川区 東京都交通局